一番妊娠しやすいのは排卵日の2日前だと言われます。不妊治療におけるタイミング方でも自然妊娠でもここを狙って関係を持てば妊娠する確率が高くなるわけです。

 

妊活中の夫婦は基礎体温を測ったり、前回の月経から排卵日を割り出したりしながら、排卵日付近にタイミングを合わせていることでしょう。上手く受精していたら妊娠の可能性があるし、受精していなかったら次のタイミングまで待つことになります。ですから排卵日が終わったらちょっと休憩して次のタイミングに備えてコンディションを整えるという夫婦もいらっしゃるかもしれません。

ところが今回のテーマは受精直後のセックスに妊娠を助ける働きがあるというお話です。

どういうこと?

精子と卵子が出会って受精卵となったらもうほかの精子は卵子の中に入れないし、あとは体の外に排出されるだけじゃないの?そう思われても不思議はありませんが、実は受精卵ができた後に放たれた精子に妊娠を助ける重要働きがあったのです。

受精の仕組みについて

妊娠の可能性が高いのは排卵日の2日前から排卵直後までです。まずはこのことについて説明します。

通常28日周期で排卵が行われます。 卵子の寿命は排卵後16~24時間と言われ、排卵後6時間を過ぎれば老化が始まります。 だから妊娠しようと思ったら排卵後6時間以内に精子と卵子が出会って受精しなければなりません。

一方精子の寿命は4~5日です。精子は射精後48時間を過ぎれば徐々に老化が始まり84時間を過ぎれば受精能力を失ってしまいます。だから精子は射精後48時間以内に卵子と出会う必要があるのです。射精から卵管内の精子の貯蔵庫までは5~6時間かかります。 精子としては射精後できれば1日半以内に卵管内にたどり着き、卵子がやってくるのを待ちたいのです。

 

排卵直後に夫婦関係を持ったらギリギリ間に合うスピードです。排卵から数時間たってセックスをしていたのでは卵子の受精可能時間に間に合わないということです。このタイミングでうまく卵子と出会うことができたら受精する可能性が高いです。

受精卵が子宮内膜に着床するまで

卵子の受精時間にドンピシャのタイミングでたどり着いた精子がめでたく卵子の中に入り受精したとします。するとその卵子は他の精子が入らないようにバリケードをはります。

それから受精卵が細胞分裂を開始して、徐々に子宮に近づくわけです。 時間にして約7日間で子宮にたどり着きます。そこから約5日間かけて子宮内膜に着床します。

ここからが本日の本題です。

受精から着床までの合計約12日間の間に夫婦関係を持つことが果たして妊娠にとってどんな意味があるのでしょうか。

受精後のセックスは「精液への暴露(さらされる、むきだしになるの意)により免疫寛容となり、受精卵の子宮への着床が促進される」そうです。

あんまり使わない言葉だけど、暴露って「あばかれる」という意味以外に「さらされる」とか「むきだしになる」とかの意味があります。

 

つまり避妊をせずに夫婦関係を持つと精液が膣内に放たれます。

すると「精液の暴露」つまり膣や子宮頚管、子宮などが精液にさらされます。

「精子の暴露」って精液に触れるってことだけど、暴露って表現を使うほど女性の身体の中には変化が起きるっていうことです。

そう確かに精液は匂いも独特だけど何だか特別な液体である気がします。

実際特別な液なんです。精液には精子を届けるだけじゃなくて、妊娠しやすい状態を作る役割も担っているようなのです。

性交をきっかけに排卵する動物がいる

ちょっと動物の話をしてみます。人間から離れて動物実験の話になるんだけど、マウスは性交をきっかけとして排卵が起こるそうです。

マウスは2年の寿命の中で子孫繁栄しなくちゃならないから、そういう風にできているんでしょう。

人間がマウスのような体の仕組みになっていれば子宝に恵まれすぎて、今の時代を生きていくのは大変かもしれない。だから、そうならなくてよかったんじゃないかな…。

 

精液には受精卵の着床を促す働きがある

話を人間に戻します。

マウスの話を出したのは「性交をきっかけとして排卵する動物」がいるということ。

そして人間にもちょっとだけ似たような仕組みを持っているということです。

 

マウスは性交すると排卵が起きると同時にもう一つ見逃せない出来事がメスの体の中で起こります。子宮の中に「調整性T細胞」というのができて妊娠の準備をするのです。

どんな準備をするのかというとこの「調節性T細胞」は移植や妊娠などの際に、移植された臓器や胎児が体に拒絶されないようにする免疫細胞なのです。

通常体の中に異物が入ってきたら免疫機能が働き体はそれを攻撃します。ウイルスなどが入ってきたらそれをやっつける働きが体にはあるのです。まして臓器移植となると免疫機能は凄まじく働きます。

 

そして妊娠の時にもそれは起こります。胎児は異物とみなされ攻撃されてしまうのです。

そうなってはせっかく受精卵が育っても着床や妊娠に至りません。

そこで重要な役割を担うのが「調整性T細胞」であるわけです。調整性T細胞が働いて胎児を拒絶しない、つまり免疫寛容な状態を作り出すのです。

そしてそのきっかけとなるのが精子への暴露というわけです。

 

人間の場合はマウスのように性交によって排卵が促されるということはありません。

あくまで排卵日の前に仲良しをして卵管の中で精子が卵子を待ち構える必要があります。

しかし人間にもマウスと同じように「精液の暴露により調整性T細胞ができやすくなり着床を促す」働きがあったのです。

 

受精卵ができて約7日間かけて子宮にたどり着き、約5日間かけて子宮内膜に着床するまでの間に夫婦関係を持つことで精液が子宮内膜の環境を整える働きをしてくれるのです。

卵子と受精するたった1個の精子以外の精子だけでなく、精液そのものが着床・妊娠を促す大切な役割を担っていたのです。

 

子宮にたどり着いた精液は赤ちゃんのベッドメイキングをしていたのでした。

だから排卵後の仲良しは必要というお話でした。