少し怖い話になるかもしれません。

会陰が裂けることを防ぐために会陰マッサージを行う妊婦さんが多いのですが、

今回はその裂け方に関する話です。

痛みや傷に関する話が苦手な方は読まないでください。

会陰が裂けることを「会陰裂傷(えいんれっしょう)」というのですが、これにはレベルがあります。

原因は「出産」に限定されるので裂ける場所は同じなのですが、問題はその裂け方です。想像するだけでも顔をしかめたくなるような表現になっています。

レベル3や4なんてとても恐ろしいのですが、もともと骨盤の小さい方や赤ちゃんの頭が通常より大きく、出産のスピードが速すぎて対処が間に合わない時などに起こります。

高齢出産で会陰付近が固くなっている場合にも可能性が高くなるのですが、会陰マッサージをすることで予防したり、裂ける場合にも少しでも軽く済むようにしたいものです。

ちなみに裂ける前に切る行為、すなわち会陰切開のときは「第2度会陰裂傷(レベル2)」と同程度の切込みを入れることになります。

再度申し添えますが苦手な方は読まないでください。

 

会陰の裂け方(会陰裂傷)のレベル

第1度会陰裂傷(レベル1)

会陰部の皮膚のみの裂傷。膣壁粘膜表面のみのかすり傷程度の時

 

第2度会陰裂傷(レベル2)

皮膚と一緒にその下の筋肉層まで裂ける

 

第3度会陰裂傷(レベル3)

肛門を絞める筋肉まで到達して肛門括約筋が断裂した時

 

第4度会陰裂傷(レベル4)

会陰から肛門や直腸粘膜まで裂けてしまった時

 

会陰の裂け方による実際の症状例

第1度会陰裂傷(レベル1)

かすり傷程度なので縫う必要はありません。出血もそれほどひどくありません。

翌日にはほとんど回復していることさえあります。

 

第2度会陰裂傷(レベル2)

「筋肉層まで裂ける」と言われるとかなりの重症に聞こえますが、会陰切開と同等で、よくあるレベルの裂傷です。傷口は3cm前後ですが筋線維まで切れているので相当出血し、当日は痛みで眠れないこともあります。

上の図は会陰切開の図です。「正中側切開」と「正中切開」がありますが、「第2度会陰裂傷(レベル2)」はこれと同等レベルの裂傷ということになります。

当然、赤ちゃんは血まみれになって生まれてきます。

傷口は縫合します。最近は体に吸収される糸を使い抜糸は必要ないことが多いです。

痛みが退院するころにはほとんどなくなっていることもありますが、場合によっては1か月ほど続きます。

よく「便をするときに傷口が裂けてしまわないか」と心配する方がおられますが、傷口が肛門まで達しておらず、便をするところとは別の場所なので排便により裂けることはありません

早く回復させるには患部を圧迫せず、清潔にすることです。カレンデュラオイルが回復の助けになるでしょう。

 

しかし1度や2度なら軽いと安心してはいけません。3度や4度なら医師からその場で伝えられ、処置に時間がかかるため妊婦さん本人も自覚できるのですが、1度や2度の場合は知らずに表面上はすぐに治ってしまう場合があるのです。

そのため出産後、何十年たって便失禁が続くため検査したところ実は出産時の会陰裂傷が原因だったということがありうるからです。

また会陰裂傷はなくても外肛門括約筋に分布する陰部神経が切れることにより便が漏れやすくなるということもあります。外肛門括約筋は意識的に肛門を閉めるときに使うのですが、若いときはほかの筋肉がそれを補うため何年も気が付かず年を取ってから緩くなり、詳しく調べると出産時のトラブルだったということがわかるのです。

 

第3度会陰裂傷(レベル3)

2度までなら会陰切開と同じだし通常よくあるレベルの裂傷です。3以上になると膣壁縫合肛門括約筋縫合が必要となります。そこまで裂けているということなので手術前に直腸の様子が確認されます。

3度以上の裂傷となると括約筋が傷ついているため手術後も便意を我慢できず便失禁してしまうことがあります。そうなると傷口から細菌に感染してしまう可能性が高まります。

3度以上の裂傷になるならあらかじめ人工的に切開してしまったほうがいいというわけです。

 

第4度会陰裂傷(レベル4)

膣口はもちろん直腸まで縫合が必要となるような傷です。

人によっては人工肛門が必要だったり、膣と直腸がつながってしまうほど裂けるので膣からガスや便が出てきてしまうことさえあります。

激痛が1週間以上続き、痛み止めなしではとても過ごすことができないでしょう。当初は何度も痛み止めの点滴を打つことになります。それでも効かないときはかなり強い麻酔を患部に直接に打ちます。退院してもしばらくは痛み止めが手放せません。トイレのとき、おっぱいをあげるとき、食事の時以外は寝たきりの生活がしばらく続きます。座るときは円座が手放せないでしょう。

完治まで半年以上かかる人もいます。表面上傷が閉じて治っているように見えても突然激痛が走り出血することがあります。裂傷した部分を直接縫うわけじゃなく周りを引っ張って縫います。それにより傷自体はくっついても腸の粘膜が再生するまでは時間がかかります。そのため外部からちょっと強い刺激が入ると組織部分から出血してしまいます。このような状態が半年以上続くのです。

場合によっては一生痛みがなくならない人もいるくらいです。

 

会陰裂傷の予防のためにできること

会陰裂傷を起こしてしまうのはもともと骨盤が小さい人、高齢出産等により会陰が固い人、出産スピードが速く会陰切開が間に合わない場合、吸引を行う場合などです。

原因は様々なので対策は立てにくいですが、できるだけ準備はしておきたいものです。

まず自力でできることと言えば会陰マッサージでしょう。妊娠28週を過ぎた頃から週に2~3回、臨月にはできるだけ毎日行いたいものです。

マッサージオイルをコットンなのに染み込ませパットを当てて30分以上あるいは一晩そのままにしておく膣ピチュも併せて行うとより柔らかくなりやすいです。

出産スピードについてはコントロールが難しいですが、最後に赤ちゃんの頭が見えたとき、深呼吸をしなくてはいけない場面で無理にいきんだことによって裂けてしまうことがあるので担当医や看護師の指示に従いましょう。

陣痛を乗り越え最後の苦しいときに冷静になるのは難しいですが、後々のことを考えても重要なことです。

会陰切開については回避したいと思うあまりに結果レベル3以上の裂傷になっては元も子もありません。必要であれば適切な処置をしてもらいましょう。